中小企業診断士の西井克己です。
この資格は食える資格、食えない資格といろいろ評価はあると思いますが、私自身は、食える食えないという評価と資格の有無は関係ないと思っています。
すなわち、これまで食えないという評価(自己評価も含む)であった人が、
資格を取ることでその評価に変化(食えない→食える)があることはあまりないのではないかと思っています。
私は、士業という資格は、あくまで、その人が何かを達成したいという思いを実現するための道具であると思っております。
中小企業の経営全般を支援したい、労務管理面を支援したい、管理会計で企業を支援したいそのような思いが先にあり、
その思いを実現するための道具(手段)として資格はあるのではないかと思っております。
いつも思うのですが、士業はありがたいことに自分だけで仕事が完結する数少ない仕事の1つです。しかし、士業になって開業したら明日からおねがいしますおねがいしますとお客様が来るわけでもありません(弁護士先生でもそれはありません)。
士業になった食えるのか?という議論よりも、
士業として生計を立てるためには、誰かから仕事をもらうという考え方から脱却し、積極的に自己実現を図る考え方に代わる必要があるという考え方を持っております。
西井の士業としての思いは、2011年6月17日で行われたKCGの例会の講師に招かれた際にレジュメとしてまとめております。
以下に転載します。
◆はじめに
当社は平成18年に設立、今年で6期目になりました。当社は中小企業診断士として特別なノウハウを持っているわけではありません。当社は、当たり前のことを愚直にやってきていること、中小企業診断協会の諸先輩を始めとする人の縁に恵まれたことが、6期目を迎えることができた要因であると思っております。
特に、中小企業診断協会石川県支部のプロコン育成講座や理事会にて、先輩診断士や同期診断士との交流を深められたことが現在の仕事にも良い影響が出ていると思っております。
本日、若輩者である私に講演の機会をいただきましたことに感謝いたします。
・中小企業診断士を目指した理由
大手化学メーカー勤務時代に研究部門から開発部門(研究テーマを開発する外回り部門)へ異動となり、研究以外の知識を習得したかったため。
大学院の同期と将来的に起業することを決意しており、役割分担(同期:研究開発、西井:営業と総務)を行う必要があったため。
・実務前に考えていたことと現実とのギャップ
□実務前
中小企業診断士を目指していたころは、上場企業のサラリーマンであったため、ある程度の方向性を示すことで、物事が動く状態でありました。このため、あるべき姿の方向性を見つけ出すことが重要な役割であると思っていました。
経営改善に関しても、苦しくなったことの要因を明らかにしていくことが最重要課題であると思っていました。
□現実
キーワード 「段取り8分」
「一緒に汗をかく」
中小企業は、大企業と違い事前情報がほとんどない状況でありました。このため、正確な情報を得ることから始める必要がありました。
特に私は、ノウハウや経験を持つわけではなかったため、中小企業経営者とお会いする前にできる限りの情報を得ることに注力しました。決算書やホームページによる情報収集は当然のこと、外部市場データも事前に準備しました。独立1年目は、準備段階で相当な時間をかけて面談に臨んでおりました。
中小企業経営者と面談するときは、当初はできる限り聞き手に回り、ある程度会話ができる雰囲気を作ることに注力しました。私は若手であったため、わからないことはそのままわからないと答えるようにしておりました。また、たとえ自分の得意な業界のお客様であっても、自分の知識や情報を先にお話しするのではなく、あくまで聞き手のスタンスを取っておりました。
お客様から正確な情報を提供していただくためには、こちらからもできる限り情報提供を行う必要があるため、お客様から頂いた決算書を同業他社の経営指標と比較し、その結果を説明することは、創業以来必ず行っております。
また、正確な情報把握のためには、ある程度のデータをお客様から提供いただく必要があります。しかし、小規模のお客様は、そのようなデータをお持ちでないことが多く、データをいただくのではなく、必
要なデータをこちらで作成するなど、お客様とともに汗をかきながら仕事を行うことも少なくありません。
このスタンスは、現在も続けているところですが、これだけでは中小企業診断士としてお客様を満足させることはできない現状でした。
すなわち、自分の得意分野を持たなくてはさらなる顧客満足は勝ち取れないということでした。
開業前にいろいろな方からその指摘をいただいており、まったくその通りであると現在は思っております。
私自身開業以来お客様の業種にこだわることなくどんな分野でも受けてきました。結果として、開業4年目以降はある程度製造業のお客様が多くなる結果となりました。この理由は主に2つであると考えております。1つは、お客様が私を選んでいただく際に製造業出身という背景を勘案いただいたこと、もう1つは当社の佐々木が診断士登録を行い社内で役割分担を行ったことであります。
・中小企業診断士で食べていけるのか?
開業前や中小企業診断士の取得を目指す方から多くいただく質問の1つです。
私は常に「中小企業診断士で食べていけない人間はどんな資格を取っても食べていけない。」と答えております。平成22年度より、中小企業診断協会石川県支部の石川県士業団体連絡協議会担当理事を務めさせていただいている関係上、他士業の方と会話をする機会が増えましたが、いずれの士業も資格だけで食べている方は少ないように思います。資格は、あることをやりたいと思う目標(自己実現)に近づくための道具でしかないと思います。士業として生計を立てるためには、誰かから仕事をもらうという考え方から脱却し、積極的に自己実現を図る考え方に代わる必要があると思います。
・中小企業診断士として士業として大切にしていること
これまでご縁のあった方から1つでも多くの満足を得て、中小企業診断士の知名度向上につなげていきたいと考えております。また、倫理観のない行動をとり中小企業診断士の価値をおとしめる行為は決してしないことを常に考えております。
たった1人の中小企業診断士が倫理観のない行動やお客様の満足を得られなかった場合、10人の中小企業診断士がお客様の満足を得たとしてもそれを挽回することはできません。
士業の中でもっとも大切にすることは倫理観であると思います。中小企業経営者から信頼を得た場合、士業として適切な行動をとることでわずかながらにでも利益は得られると思います。ある程度軌道に乗った士業は、倫理観を無視すれば、儲けることができるかもしれません。士業は、そのような状態になった時に、自分を律することができる人材でなければならないと思います。また、士業は先生や指導する立場ではなくむしろ「中小企業経営者から学ぶ立場」であることを常に肝に銘じております。
◆最後に
本日、お話を聞いていただいた方の中から1人でも多くの方が中小企業診断士として活躍され、機会があれば、当社の士業と切磋琢磨できることを願っております。
転載終了
資格は食えるようになる手段であることは間違いありません。あくまで目標に近づくための道具(手段)なので、資格を取ったからと言って食えるようになるわけではありません。
中小企業診断士西井克己が経営している迅技術経営(中小企業診断士4名、社会保険労務士1名)では、金沢で修行(10年ぐらい)して、故郷で支店を出したいという思いにも対応したいと思っていますのでご相談ください。
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