こんにちは。迅技術経営で中小企業診断士として活動している小川です。
前回の更新から少々時間があいてしまいました。
2025年に入って2ヶ月半が過ぎ、中小企業診断士二次試験の結果も出ましたね。
勉強されていた皆さんの結果はどうだったでしょうか。
さて、今回は「補助金コンサル」というテーマで話していきたいと思います。
補助金コンサルという働き方・考え方は、ここ数年で注目が集まったので聞いたことがある・興味があるという方も少なくないと思います。
以前から補助金コンサルという働き方や接し方に対しては良い側面とそうでない側面があると思っておりましたので、今日はそのことについて触れていきます。
1.補助金コンサルが浸透した経緯
2010年代半ばごろから、「ものづくり補助金」や「持続化補助金」など、中小企業向けの使いやすい補助金制度が拡充されました。
これらの制度が開始された当時、私は診断士として活動を始めて数年といった時期でした。当時は先ほど挙げた2つの補助金が国の補助金としてメインであったように記憶していますが、いずれも「事業者自らが申請書を作成する・できる」ことが制度構築に対する考え方の重要な要素であったという印象を受けていました。
この時期、採択された企業の中には実際に経営者や幹部自らが申請書を書き上げたという事例も数多くありました(少なくとも石川県でもそのような事例を一定数伺っていました)。
しかし、採択競争が激化する中で、我々中小企業診断士などの士業が申請を支援するケースが徐々に増え始め、制度設計者側もそれを前提とした制度設計へと変化していったように感じました。
(例えば、審査員が読みやすいように図表を多く使うよう指示がある、など)
そしてこの流れが決定的になったのが、2020年以降のコロナ禍でした。
この時期(2024年時点でも制度としては残っていますが)、コロナ禍で社会情勢が大きく変化したことから、「事業再構築補助金」という制度を通じて事業転換を後押ししようという動きが高まりました。
この補助金は、補助金額の大きさ(最大8,000万円)、補助対象費用の幅(建物も対象になる)といった点で、それまでの補助制度とは異なっていました。
また、支援する側という観点では、外出自粛の流れの中で診断士などの資格に挑戦したりフリーランスとして独立する人が増加し、会議や打ち合わせのオンライン化が進みました。
事業再構築補助金を通じて新たな事業に取り組みたいが自分で申請書を書き上げるには手間がかかるし採択される可能性にも限界があるという経営者側の思惑と、採択に向けた支援をすることで自身のキャリアを確立したいという支援者側の思惑、それらが重なったことが、「補助金コンサル」という支援のあり方が急速に普及した一因になったと考えられます。
2.「補助金コンサル」のメリットと限界
2−1.メリット
・事業計画をわかりやすくまとめる経験
私自身がそうだったのですが、補助金の申請書づくりは事業計画を作る何よりの訓練になります。
補助金の大半は申請書のみで審査されるため、その会社のことをまったく知らない人が短時間で読んでも、しっかりとその会社の過去、現在、そして未来が明確に伝わらなければなりません。
経営者の方々から会社のこれまでと現状をヒアリングし、その会社の良さや課題を経営者と同じレベルか、時にはそれ以上に理解する。そして、将来に向けた方針を補助金を活用してどのように実現していくのか。そうした内容を文章や図表を活用して明確に示していくという工程は、支援者としてのレベルを確実に上げてくれます。
・前向きな企業・経営者と知り合うきっかけづくり
補助金というものは、基本的に現状から何かを変えようとしている会社がチャレンジするものです。つまり、何らかの課題を抱えておりそれに対して前向きに進もうとしている会社ということになります。
そうした会社の中には、とても魅力的な人や事業内容があったりします。そうした方々と関わることができ、さらなる成長に向けて貢献できるということには、支援者ならではの大きな意義があります。このような会社や人との出会いは、きっと皆さん自身の成長に強くつながります。
2-2.限界
・仕事が補助制度の動向に左右されやすい
前述のとおり、中小企業を対象とした補助金・補助制度が拡充されてきたのは、この10年くらいだと思います。この間、「ものづくり補助金」や「持続化補助金」などを中心に、国だけでなく都道府県単位で実施されているものも含めると、実に様々な制度が生まれてきました。
中でも「補助金ビジネス」や「補助金コンサル」といった言葉がより浸透したきっかけは、コロナ禍における「再構築補助金」でした。
このとおり、補助金は行政の制度であるため、それを事業の軸とすると制度の動向に軸が左右されることになります。アフターコロナや各地での災害発生により各種補助金の予算が削減される中で、コンサル会社の倒産が増加しているというニュースもこの流れに乗ってしまっているから、という要素があると思います。
・「その場限り」の関係になりがち
補助金を事業の軸にしている方を見ていると、「申請書を作成して採択される」ことを「成功」と定義して成功報酬を受け取っているところが多いようです。
このような体系を採用していると、お客様との関係が「その場限り」になりがちになってしまう可能性があります。
新しいビジネスへの挑戦や設備投資は、事業者さんの思いを実現する上での手段の1つであり、そこでゴールではありません。診断士の仕事をする中で本当にやりがいを感じられるのはその先であるにもかかわらず、そこまではカバーしない…というのは、とってももったいないと感じてしまいます。
3.おわりに
弊社では、よく「資格は刀であって、それをどう使うかは使い手次第」という話をします。今回の話も、まさにそこがポイントだろうと感じています。
中小企業診断士の認知度が上がって資格を持つ方が増える中で、診断士が介在することで事業者さんが思いを実現できる可能性を引き上げることができているとすれば、それはとてもいいことだと思います。
一方で、先程も述べたとおり、補助金の申請、採択といったことは会社を経営する中でほんの一部分のことであり、診断士として本当の意味で価値を発揮できるのはその前後にあるような気がします。
学生の方、すでに社会で活躍されている方、様々なハードルを抱える方、どのような属性の方であっても、「地域や地方、そこで活動されている方々のために、自身や資格の力を活用したい」という方と一緒に働くことができればと思っております。
石川県という地方の、しかも10人にも満たない会社に対してアクションを起こすことは勇気がいると思いますが、「小さな一歩」を踏み出してみませんか?
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