士業とAI

生成AIが生活の中に浸透するようになってきました。士業の仕事も例外ではなく、生成AIを活用することで飛躍的に業務の効率化が実現することが期待できます。どのような場面で活用できるのか、またどのような場面ではまだまだ限界があるのか、「士業×生成AI」の現在地について書いています。

こんにちは、迅技術経営の中小企業診断士・小川です。

弊社(迅技術経営)は、今は資格も経験もないが、将来的に資格を取得して地域やそれを支える中小企業などのために貢献したいという思いを持つ方と一緒に働きたいと考えています。

弊社の士業育成に対する考え方や独自の制度である士業育成システム®、弊社の特徴についてはこちらの採用ページ知的資産経営報告書に記載されておりますので、そちらをご覧ください。

 

ここ数年、AI(人工知能)が我々の日常生活にかなり浸透するようになりました。皆さんの中にも、日々AIを活用しているという方もいらっしゃると思います。2年前にもAI関連の投稿をしたことがあったのですが、あの頃よりさらに普及が進んでいますので、「付き合い方」という視点で改めて見ていきたいと思います。

1.AIによる業務の代替可能性

(前回の記事はこちら;AIに代替されにくい中小企業診断士という仕事

AIが世に出始めたころ、「自分たちの仕事もAIに取って代わられてしまうのではないか?」という文脈の話題がありました。
難関資格である士業や国家資格の業務の中にも、そうした「危機」にさらされるのではないか、ということで、以前の投稿で紹介した記事を取り上げました。

その中では、官公庁に提出するような書類を作成する業務(税理士、行政書士、弁理士などが行う業務)は特にAIに代替される可能性が高いとされていました。
一方で、代替されてにくい業務として、弁護士と中小企業診断士の業務が取り上げられていました。

冒頭でも書きましたが、2年前に記事を執筆した時点と比較して、飛躍的にAI(特に生成AI)が浸透するようになりました。当時は文章が中心でしたが、画像やイラスト、動画、音楽といったアート領域のもの、プログラミングのコードまで、より多くの場面でAIが活躍するようになりました。
実際、これまでは士業が独占的に行っていた書類作成などの業務の一部は、AIなどに代替されつつあるようにも感じます。

そして最近、我々の業務(中小企業の経営支援)においても、AIが関わってくる場面が増えてきました。場合によっては代替される可能性も大いにあると感じています。
例えば、ChatGPTをはじめとする生成AIでは、会話を蓄積していくことで使用者に関するメモリが更新され、よりその使用者に適したアドバイスや情報を提供してくれるようになります。これはまさに、我々が行っている「現状分析(診断)→方向性や具体策の提示(治療方針)」といった流れにほかなりません。
経営者さんが我々と話すかたわらで、ご自身の考えや我々が話した内容を生成AIに入力する、そうするとそれを基にしたアドバイスが瞬時に生み出される。
生み出された内容と我々が検討している方向が異なると、そこでまた意思決定の分岐点が生まれる…

そんなことが実際に起こるようになってきています。

では中小企業診断士の業務は将来的に生成AIに代替されてしまうのか。
これに対しては、少なくともすぐにはそのような状況にはならないと考えており、むしろ「良きパートナー」になる可能性が非常に高いと感じています。

次項では、我々診断士が生成AIを使ってみて感じたいいところと限界について書いていきます。

 

2.生成AIを実際に業務に取り入れてみて(いいところ)

実際に生成AIを使ってみていいなと感じる点は「『作業』の高速化」と「クリエイティブな議論を開始し深める『土台』形成」です。以下、それぞれ見ていきます。

・「作業」の高速化

我々が普段行っている業務は、このブログでいつも申し上げているとおり「診断(会社の現場や課題を明確化する)」と「治療(課題の解決やあるべき姿の実現に向けて支援する)」に大別されるのですが、細分化することができます。

例えば経営計画、事業計画を策定する場面を想定してみましょう。
最初は、その企業について深く知るためにヒアリングを行います。そしてその情報を整理し、企業のヒアリングだけでは得られない外部情報も収集することで、内外環境をまとめます。
そしてそれらの情報と経営者さんの思い、意思を踏まえてその会社のあるべき姿やその実現に向けた課題、アクションプランを策定し、最後に文章や図表の形でまとめていきます。

これらの細かなステップを見ていくと、我々の価値を発揮している(というと大げさかもしれませんが)部分と必ずしもそうでない部分(作業)に分類することができ、後者は生成AIに手伝ってもらうことができます。
今回の例でいうと、外部環境の調査やアクションプランのガントチャートへの落とし込み、各種図表の作成などは、我々がExcelやPowerPointなどを使用して作る時間とは比べ物にならないスピードでこなしてくれます。

また、補助金にチャレンジする場合などは、公募要領を読み込ませることで申請書作成時に気をつけるべきポイントや効果的な書き方などをまとめることも可能です。

 

・クリエイティブな議論を開始し深める「土台」形成

もう1つ、生成AIに活躍していただけるなぁと感じる場があります。それが議論の「土台」を作る作業です。
具体的な実例を挙げると、経営理念の策定、商品企画、そしてこのブログです。流れはこんな形です。

目的に応じたディスカッションをして、項目を記録する
(例:経営理念…この会社が社会の中に存在する理由は?、商品企画…次の商品はどのようなコンセプトにするか?、ブログ…○○の層にアプローチするためにはどのような記事を出すべきか?)

ディスカッションで出てきた項目を生成AIに読み込ませてまとめてもらう

出力結果を土台に再度ディスカッションする

 

出てきた項目をまとめて、類似するものについてはタイトルをつけていただく。このような作業は人間がやると結構時間がかかるものですが、AIにお任せしてみると1分もかからずにそれなりの精度のものが出力されます。

 

3.生成AIを実際に業務に取り入れてみて(限界?)

前項で挙げた活用例はあくまで弊社でのものにはなりますが、こうした「人がやると時間がかかるけど、結果に大きな差が生まれない」業務に関しては、生成AIが大いに役立つなぁ、と感じています。

逆に、「人によって出力結果に差が生じるもの」については、その塩梅を以心伝心でAIが感じ取り、それに応じた結果を出すことについては、やはり難しいと感じています。
また、情報を入力する段階においても、その会社の状況やこれまでの経緯、ディスカッションの目的、AI自身の役割(ファシリテーター、コーチ、コンサルタントなど、どういった役割を演じていただくか)によって、結果に大きな差が生じることがしばしばあります。

また、「それなりのものが出力される」といっても、それをそのまま活かすことができるかといえば、必ずしもそうではないことが多いです。
出力された結果を基に士業が判断する、場合によっては少々編集する。そうして初めて次のディスカッションに活かすことができるようになると感じています。

 

4.おわりに

私自身、生成AIの使い方はまだまだ限定的であり、使いこなしていけばもっと便利なものになると感じています。特にデータの収集や分析に関しては、人間を遥かに超える量とスピードを実現することができます。
一方で、データについても時々全然違うことを言ってくることもありますし、言葉などの「ゆらぎ」があるものについては、出力されたものを人間がどう判断するかが非常に重要な要素だと思います。

とはいえ強力な相棒になりうる道具であることには変わりありませんので、もっとうまく活用していきたいものですね。

 

学生の方、すでに社会で活躍されている方、様々なハードルを抱える方、どのような属性の方であっても、「地域や地方、そこで活動されている方々のために、自身や資格の力を活用したい」という方を募集しています。
石川県という地方の、しかも10人にも満たない会社に対してアクションを起こすことは勇気がいると思いますが、「小さな一歩」を踏み出してみませんか?
オンラインでも対面でも、弊社の士業と話すこともできますので、ぜひお問い合わせはこちらから、お待ちしております。

興味を持っていただいた方は、迅技術経営の採用ページもご覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.