まちづくりと中小企業診断士

「まちづくり」という言葉には、実に多様な意味合いが含まれています。非常に聞こえがよく使い勝手もいい言葉であるために、人によって大きく意味合いや範囲が大きく異なります。今回の記事では、そもそもまちづくりとはなんなのかということに加えて、中小企業診断士ができるまちづくり支援のあり方について記載しています。

こんにちは。

未経験ではあるが中小企業の支援がしたい、中小企業支援を通じて地域活性化の役に立ちたい。
そんな思いを持つ方々に対して「士業育成システム」や「恩送り」といった「共育恩送」の考え方を通じて実現のお手伝いをしている迅技術経営の小川です。

以前、採用活動の一環としてまちづくりに興味を持つ学生さんと関わる機会がありました。
「まちづくり」というと、少なくとも数年前は学生さんの間で非常にホットなフレーズになっていたように感じます(今もそうかもしれません)。
そうした方々の中には、まちづくり団体を志望する方もいらっしゃれば、公務員を志望する方もいらっしゃいました。

私はそうした関わりの中で、学生さんたちが考える「まちづくり」と「士業ができるまちづくり」には少なからずギャップがあると感じました。

今回は中小企業診断士、もしくは士業と「まちづくり」について書いていきたいと思います。

1.「まちづくり」とは

「まちづくり」という言葉はとても便利なもので、とても多様な(≒あいまいな)意味合いで使われています。言葉の定義は何人かの研究者によってなされていますが、個人的にしっくりきたものを紹介します。

・特定の地域社会が主体となり、行政と専門家、各種の中間セクター、民間セクターが連携して進める、ソフトとハードが一体となった居住環境の向上を目指す活動の総体(佐藤 1999)

・まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちとしての活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である(佐藤 2004)

他にも様々な角度から定義づけが試みられているのですが、目的は生活の質の向上より便利で人間らしく生活をすることであり、そこに住む地域住民を基礎とした多様な主体連携して行う取り組みである、といえそうです。

個々の単語にはさらにそれぞれ多様な解釈が成り立ちそうですが、今はここまでで進めていきたいと思います。

余談ではありますが、中小企業診断士試験とまちづくりといえば、「まちづくり三法」が思いつく方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事とは直接関係ありませんが、おさらいしてみましょう。

・大規模小売店舗立地法(大店立地法)
床面積1,000㎡を超える店舗が対象です。中小小売業の事業機会保護に加えて、周辺地域の良好な生活環境の保持に配慮することが求められていることが、前身となった大規模小売店舗法(大店法)との違いでした。

・中心市街地活性化法
郊外化による中心市街地の衰退や空洞化を食い止めることを主な目的として1998年に施行された法律です。2006年、2014年に改正されており、直近である2014年改正では経済産業大臣が認定するプロジェクトに対して無利子融資や大店立地法の手続き簡素化、道路占用の許可の特例などといったメリットを受けられる、というものでした。

・都市計画法
バランスのとれたまちづくりや人口減少・超高齢化社会に対応したまちづくりを実現することを目的として1998年に施行、2006年に改正された法律です。市町村ごとに独自に都市計画地域の用地を決めることが可能であることが特徴です。
またまた余談ではありますが、皆さんがお住まいの市町村や地区が都市計画法上どのような位置づけになっているかを調べてみると面白いかもしれません。診断士的には工場の建設などに関連しますが、ご自身の家を建てる場合にも関わってきます。「(市町村名)+用途地域」などで検索すると出てくると思います。

話がだいぶ逸れてしまいました。当たり前といえば当たり前なのですが、法律では行政の視点から、土地をどのように活用するのか、地域住民の生活と地域の発展のバランスをどのようにとるのかといったことを焦点に「まちづくり」という言葉が使われているようです。

 

2.「まちづくり」の担い手

次に「まちづくり」にはどのような担い手が存在するのか、ということを考えてみたいと思います。なるべく漏れなくダブりなく書きたいと思いますが、すべてを挙げきれていない場合はご容赦ください。

・地域住民
・主に地域住民からなるグループ、コミュニティ
・町内会など地縁組織
・NPO、各種団体
・企業、民間事業所
・教育機関
・行政、公的機関

こうして挙げてみると、実に多様な主体がまちづくりに関わっていることがわかります。また、関わる主体に応じて関わり方も多様であることも想像できます。
さらに、そもそも対象となる「まち」自体が非常に多様であり、どれ一つとして同じ「まち」は存在していません。
まちづくり自体の定義があいまいであり、かつまちづくりに関わる主体や関わり方が多様、さらにまち自体も多様であるなかで、一括りに「まちづくり」という言葉で語られてしまっていることが、私が感じたギャップや違和感につながっているようです。

まちづくりに関連する議論をする際には、どの視点や切り口かを整理してからでなければ交わるものも交わりません。

 

3.中小企業診断士にできる「まちづくり」

それでは、中小企業診断士にできる、もしくは中小企業診断士だからこそできる「まちづくり」とは一体何なのでしょうか。

これにも様々な解がありますが、私(小川)の個人的な見解の一つとしては、行政と企業や団体を中心とする主体・主役との架け橋役としてのまちづくりへの貢献ではないかと考えています。

そのまちにいる企業や団体などの方々は、そこにいるがゆえに見えていることもあれば、見えていないこともあります。また、自分たちだけでできることには限界があり、やりたいことを実現するためには行政などからの協力が必要になる場合がほとんどですが、そうした声を適切な方に届けたり施策を利用することは簡単ではありません。
一方行政の視点では、施策を講じたり予算をつけることはできるものの、特定の取り組みに対して優遇するようなことはできません。また人的なリソースを割くことも難しく、課題を吸い上げる機能も十分ではないことが多いです。

このような近くて遠い両者の関係において、「まち」や取り組み自体の現状や課題を客観的にみつつ、適切な施策を紹介したり伝えたり活用を手伝ったりということができるポジションが中小企業診断士であり、実はこうした「半中・半外」のようなポジションが取れる方はそれほど多くないと感じています。

「まち」の内部にも多様な利害が存在するため、この役回りは実際かなりの困難が伴いますが、個々の単位での企業支援では得られない効果が得られます。

 

4.終わりに

「まち」や「まちづくり」が非常に多様であるとともに、「まちづくり『支援』」のあり方も非常も多岐にわたります。今回は中小企業診断士という視点からまちづくり支援のあり方を記載しましたが、だからといって他のあり方を排除するようなことはなく、地域住民などの主体となる方々の視点に立って行われるものはすべて素晴らしいものと思います。

もし私なり、弊社なりのまちづくり支援のあり方に共感していただいたり興味を持っていただいた方は、コメントや採用ページへのアクセスをお願いします。

弊社(迅技術経営)では、性別や経歴に関係なく、士業資格(中小企業診断士、税理士、社会保険労務士)の取得を通じて地域のために貢献したいという方に対して、「士業育成システム」による支援を行っています。
資格を取得して一人前になった後は、自らの故郷などに支店を設け、皆様の力を還元する取り組みも行っています。

採用も随時行っておりますので、こちらの採用ページをご覧ください。

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